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2009-03-27 11:20:58

一社会教育団体がなぜ保護者を「総動員」できるのか? ∞連帯は「法と人権」を守ってこそ∞

テーマ:PTA

当方の問いかけに答えていただいたoyajiさんの記事(090324「PTAの強制加入!?と役員ノルマ・・・私の関わりは・・・」http://blog.goo.ne.jp/pta-oyaji-blog/e/4b0da0eef0a947f44f4426f75582d57e)に対する率直な疑問、批判を述べてみたい。oyajiさんは教育委員会委員でもあり影響力も大きく、またoyajiさんの関わるPTAには、全国の多くのPTAに共通する問題点があるように思うから。

oyajiさんの関わるPTAでは、入学式のあと「PTAの入会式」を行うとのこと。
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入会の場面です。・・・今日から皆さん・・・PTA会員なんですよという説明はしますが
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そして、PTA加入率は100パーセント。そこに、PTA入会に関するインフォームドコンセント(十分な説明と納得の上での同意)は成立していない(この理解でいいですよね? 私は、その方式を導入した時の校長の「大丈夫ですか?」との反応は極めてまっとうだと思う。)

oyajiさんは、次のように言う。
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この(通学路の危険地点での)旗振り活動がわが校ではPTA活動の一環だった・・・なのでPTAには全員加入
その大原則が必要不可欠だったのかなって思います。

それと、私たちの地区は池田小の事件以来、毎日、日に2回安全パトロールを実施中です。
(中略)
こういった部分が、全員が一度は役員で関わりましょうという意思の原点なのかなって
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「PTAは防犯と交通安全という欠かせない活動を行う団体だから、全員参加は当然」というロジックのようだ。
しかし、待ってもらいたい。
問題の第一は、防犯も交通安全も確かに大切なことだが、具体的に何をすればいいか? その程度は? ということになると保護者の間にもいろいろな考えがあるはずだ、という点だ。
(「PTAが防犯活動に取り組むことに対する問題提起としては、社会学者の芹沢一也氏との議論を踏まえたカワバタさんの考察がある。
川端裕人『PTA再活用論 悩ましき現実を超えて』「コラム3 防犯PTAはこのままでいいの?」(中公新書ラクレ)。
なお、ブログ版は、http://minnanopta.seesaa.net/article/71134194.html
ブログ版より、芹沢氏の発言を引用しておく。
「戦後というスパンで見ても、子どもの命が見知らぬ人に奪われる可能性は、おそらく、今が一番低い状況です。」
「先進国でも一、二を争う安全な国ですし、時間軸で見ても今は安全な時代です。どの角度からも安全な状況(以下略)」)

そして、問題の第二は、そのようにして保護者を「総動員」しておいて、役職が決まらないときはくじ等により決めると言う。これは事情のある保護者には多大な負担になるし、またたとえ免除されるとしてもプライバシーの開示は不可避のはずだ。
健康上の問題や深刻な家庭事情等をどうして「赤の他人」に言わせられなくてはならないのだろうか。そんなことを言わせる権利がなぜPTAにはあるのか(怒)!

***
なぜ?全員にノルマ的に課していたのか?・・・
一つの理由に・・会則の中の会員資格に会員はすべて平等な権利と義務を有する・・かな?
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「平等な権利と義務を有する」と会則にあるといっても、その「権利と義務」が具体的に何を意味するのかは人により解釈の分かれるところ。
百歩譲ってそのような解釈を前提にPTAを運営するのならば、入会してもらうに際して、その自らの解釈を新入生の保護者にきちんと示し、その解釈に賛同してくれた人に入ってもらうべきだと思う。
上の引用部分に続けて次のようにも言われているが、意味不明である。
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ただそういう論理ではなく・・・子どもが通う学校のPTAだから全員参加という意識!?
***

oyajiさん流のPTA運営(多くのPTAの流儀といえる)は、自己選択権(思想・信条の自由)とプライバシー権を蔑ろにしていると言わざるを得ないのだ。

子どもの安全が大切であることに異論のある保護者はいないだろう。しかし、ではその安全確保のために何をすればいいのかは、保護者により見解が分かれるところだろう。
それを「勝手」に決めてしまい、その実行のために保護者を「総動員」する権利が、なぜ一社会教育団体にあるのだろうか?
ぜひその根拠をお答えいただきたいものだ。

「総会で承認されている」とお答えになるのかもしれないが(?)、「総会」の決定の影響下にあるのは「現」会員であって、新入生の保護者は対象外だ。
会員でもなんでもない、新入生の保護者の六年間の学校とのかかわりのかなりの部分を、「学校とは別団体の一社会教育団体」(←しつこい。でも、これは教育当局による位置づけ)が、なぜ決められるのか??
これは、明らかに越権だろう。そして、「法と人権」を蔑ろにする行為だ。


oyajiさんは、記事の末尾で次のように述べている。
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でも大切なのは関わりであり・・・共有・・・
それにはまず参加?やってみなければ分からない的な部分も・・・・
今日の言葉・・・“考えてばかりいると日がくれちゃうよ”・・・なのかな・・・・
まずは関わりから・・・それが最初の一歩何でしょうかねぇ・・・
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人と人との真のかかわり、真の連帯は、まずもって「法と人権」を尊重する中からこそ成立するものではないのか。

右も左も分らぬ新入生の保護者をいきなり「入会式」に巻き込み有無を言わせず会員にする(いわば拉致軟禁!)。そうしておいて「ぼくたちと仲良くしようね。いっしょにやっていこうね。」と言ったって、それで本当に相手は心を開いてくれるのだろうか。
そんなことをして成り立つ「つながり」は、本当の意味での連帯に発展しうるのだろうか。
大いに疑問である。

なお、わたしは、PTA活動そのものを否定しいるのではなく、その「総動員」的運営(「全員巻き込み方式」)を批判しているので、誤解のなきようお願いいたします。






1 ■激しく同意致します。
何度かコメントしようと思っておりましたが、今まで躊躇しておりました。
私も当該ブログを拝見し、疑問に思っていたのですが、言いたいことを言って頂きすっきりしました。ありがとうございました。
何にせよ、入会時における説明責任ぐらいは果たして戴きたいものです。
2 ■総動員
 >なお、わたしは、PTA活動そのものを否定しいるのではなく、その「総動員」的運営(「全員巻き込み方式」)を批判しているので、誤解のなきようお願いいたします。
  
 私もこれについていつも悩んでいます。自分にとっては
必要性の感じられない活動であっても「決められたことだから」とか「役員なのだから協力するのが当たり前」のように言われることがつらいです。初めて役員をやった年は行事で前年度の役員が決めたことを今年度の役員がやることになる、ということもありました。自分の意見はそこには反映されていないのです。

 「決めてくれてた方がありがたい」(考えるのが面倒なので)
という人もいた事は確かですが、そうでない人にとっては「やらされている」
という感じが拭えないのが現状です。
3 ■ようこそ!
PTAのあり方とは…さん
ようこそ! です。
2ちゃんでのご発言、いつも勉強させていただいています。
最近では、PTA会費等の「寄付金」としての問題。
この観点からの批判に対して、学校当局がどう答えてくるのか楽しみにしているところです。
それにしても、ここ数日のご報告にある、文科省の返答は、非常に残念ですね。
お疲れのご様子もあるようですが、お互い、しぶとくやっていきましょう!

>何にせよ、入会時における説明責任ぐらいは果たして戴きたいものです。
まったくです。
4 ■Re.総動員
総動員」という言葉は、「PTAへの強制的入会」を意識して使っていました。
柳下さんの観点、とても新鮮です。が、わたしも、実は、踊る会長さんと柳下さんのやりとりを見ながら、その点をめぐって、疑問が渦巻いていたところでした(笑)。

個人の自主選択権が蔑ろにされるのは、入会に際してだけではなく、入会後も同様の問題構造があるようでね。
いやあ~、「根は相当深いぞ。」という気がしています。
PTAって、つくづくボランティアでもなんでもなく、むしろその反対側にあるもののような…。
なんか「非国民!」という叱咤が聞こえてくるようです…。

だいたい、バザーなんていうものは、個人の善意により行われるものであって、それが社長の命令や、「みんな」の意思によって強制されるなんて、おかしいと思うのですよね。
そもそも、「バザーなんて必要なの?」と、私は激しく思いました。
この問題、時間をかけて考えていきたいと思っております。ありがとうございました。
5 ■ご挨拶
こんにちは。どこに書けばいいか判らなくなったので、ここに書きます。FJNです。
▼まるおさん、拙blogを御紹介いただき、ありがとうございました。「尊敬」の御言葉には戸惑い照れました。
▼PTAのあり方とは・・さん、初めまして! 【違法性3】の御議論に知的興奮を感じ、印刷して再読三読中です。単独行の御スタイルにも共感します。御自愛をお祈りしております。
▼柳下さん、初めまして! 偶然御blogのブックマーク欄を拝見し、それから【任意加入】の御記事を拝読し、ファンレターの下書きを書きました(拙blogに)。
皆さま今後とも宜しく諸々御教示たまわりたく!!
  FJN合掌
6 ■もろもろ勉強させていただいています
FJNさん
コメント、ありがとうございます!
柳下さんへのファンレターをはじめ、御記事「PTAのダメな点(1)」の中の「一住民という立場でできる!」というお話、また、「リーダー研修会(2)」に引用されている「加入の任意性の大切さ」を説いた講師の言葉の紹介など、ますます勉強になっております。

今後ともよろしくお願いいたします。
7 ■FJNさんブログから
追加です。
「ぷ~た資料182:政治のPTA支配2009年03月20日(Fri)」の中の、
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とまれ、【政治のPTA支配】をプ~タ関係者が自覚しているといいがなぁ。
何せ、積極的隷従こそモラルだと錯覚している節があるからなぁ(苦笑)。
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[積極的隷従こそモラルだと勘違いしている節がある」。
するどい…。

そのエントリをめぐるコメントのやりとりも見落としていましたが、とても勉強になりました。
(読んでいたら、わたしも見当違いかもしれませんが、レスを入れたくなり、これから入れます。)
8 ■川端さんのスタンスが…。
川端さんのスタンスが
「任意加入の周知徹底」から
「スリム化して全員加入」にシフトしたみたい。
  (「たぬ子の哲学ノート」参照)

でも…、
「おもち志向」なのか「チャーハン志向」なのか、方向性がいま一つ分からないよ…。  (´・ω・`)