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2010-08-05 23:25:12

PTAが「新しい公共」になぜつながるのか(その2) 根拠となる発言の全文

テーマ:PTAと「新しい公共」
(承前)
まずは、鈴木氏の発言の全文を議事録より引用する。
金子座長の発言もついでに引用しておく(末尾)。

↓の発言に、円卓会議によるPTA関連の提言の拠り所がある。
というよりも、これ以外にはない。
よくお読みいただきたい。

**(引用)**
鈴木由香氏
 まず、このような貴重な機会をいただいたことに感謝申し上げます。私は、神奈川県立光陵高校PTA会長の鈴木由香と申します。どうぞよろしくお願いいたします。
1男2女の3人の子育ての間、15年以上にわたってPTAに関わってまいりました。光陵高校の会長を務める前は、横浜市PTA連絡協議会の会長及び日本PTAの常任理事として活動してまいりました。そうしたPTAの活動の中で、PTAの活性化は、「新しい公共」の実現そのものだと感じております。
 お手元に文部科学省の委託事業として、NPO教育支援協会が受託した、保護者を中心とした学校・家庭・地域連携及び活性化推進事業で行ったシンポジウムの資料を配付させていただいていると思います。データの詳細は後ほどゆっくりごらんいただきたいのですが、今、ごらんいただきたいところは、6ページの④PTA組織は必要だと思いますか?という問いに対しての回答です。3,285人中、65%に当たる2,139人の保護者の方が必要であると答えております。必要でないと答えた方は、わずか4%という結果です。PTAについてはいろいろと言われておりますが、これだけ多くの方がPTAの意義を感じておられます。
 ところが、その下の⑤今後、PTA委員を引き受ける予定がありますか?との問いに対して、必要性は感じるが引き受けることはできない29%、引き受けたいとは思わない22%という結果が出ています。つまり、PTAは必要な組織だと思ってはいるが、やりたくない。ここのずれは一体何なのかということです。
 「新しい公共」という考え方にも、これに似た問題があるのではないでしょうか。考え方はとてもいいのだけれども、私には関係ないのかなという感覚です。なぜ引き受けたくないのか。それは、組織が自立していないからだと感じております。使い方を決められている助成金や補助金に頼るのではなく、自分たちで課題を見つけ、解決し、自ら工夫して活動をつくり出す。それが必要だと考えます。やらされ感のある中の活動では、やりがいや誇りは生まれてきません。行政等に対しても、自分たちから提案し、それに対して補助をいただく関係がとても大切なことだと思います。
 第1回の円卓会議で福嶋さんがおっしゃっていた、行政ができないことを地域にやらせるのではなく、地域でできないことを行政がやっていくという考え方を基本に、自分たちの役割を自ら考え、実行する。御存じのように、PTAは地域によって大きく違いがあります。共通の活動とともに、自分たちの地域性を考えた独自の活動も必要なわけです。文部科学省が提案しているコミュニティスクールなどの考え方も踏まえて、行政の下請にならない、指示待ちにならない、自主的な発想で活動していくことが望まれます。
 今、PTAの活性化にはさまざまな問題があり、解決に向けて取組みを始めております。例えば私が横浜市PTA連絡協議会の会長であったとき、金融庁による保険業法の改正を受けて、PTA活動下の保険を整備し、独立した運営への道筋をつけてまいりました。だれかにやらされるのではなくて、困難があっても自分たちでやる、そういった工夫がPTAの会員の本当のやる気を育てていくものだと信じています。そして、その大きな力は、「新しい公共」の実現に通じるものと確信しています。それだけにPTAの可能性は大きいのです。各学校単位のPTAが自主性を持ち、やりがいを感じる活動ができたら、先ほどのアンケートの結果も変わってくるのではないでしょうか。
 人間関係が希薄になった今の社会で、子育て真っ最中の親は、悩みを1人で抱え、孤立している場合が多く見られます。世代間にも見られる子育てのずれや、母親同士の価値観の多様性も原因の一つでしょう。親が孤立しないためにも、PTAへの参加は、みんな同じ悩みを抱えているのだよという共通の認識によって、孤独感を取り払い、安心感を得ることができる欠かせないツールとなっています。
エネルギッシュなPTA会員は、地域において御近所さんとの関わりも強く、価値観の壁も乗り越えた信頼関係を子どもたちと一緒に楽しんでいると感じています。実は今、私は日限山という地域の連合自治会長も務めております。自治会においても、行政から委託された関連団体等の役職の改革が必要な時期に来ているのではないかと感じております。行政からの下請状態で、これもまた自主性ややりがいの薄い状況もあるようです。せっかくPTAで培った保護者の皆さんの力が、地域へと広がり、地域を活性化させることにつながっていかないのはもったいないなと思っています。
 PTAには、以前から任意参加の問題というのもあります。先ほどのアンケートの13ページの⑲に、入会時に任意であるとの説明があったかという質問に対して、説明があったと答えた方が17%、PTAの入会が自由だと知っていると答えた方が25%でした。任意参加だとPTAへ入る方は少なく、強制しないとつぶれてしまうのではと言う方もたくさんおられます。
 しかし、私は恐れることはないと感じています。なぜなら、日本の親を信頼しているからです。親が教師を信頼し、教師が親を信頼する。国民が政治家を信頼し、政治家が国民を信頼する。そういう社会をつくることが大切なことではないでしょうか。PTA活動においても信頼が基本です。
困難はあっても、一緒に解決に向けて力をあわせていくこと。大変ですけれども、やりがいがある、同じ時間を共有することによって自立した活動が生まれてくるはずです。
 最後に、「新しい公共」が実現する社会を大人から子どもたちへの贈り物にしたいです。御清聴ありがとうございました。

金子座長
 ありがとうございました。大変勇気付けられるお話で、1つだけ言いたくなりました。信頼というのはなかなかつくれないのですけれども、物は使ってしまうとなくなりますね。信頼は使えば使うほど増えるという性質もあるので、これからも頑張ってやっていただきたいと思います。ありがとうございました。
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