<229> #103

2012-08-23 23:45:43

「会としての議決」を経ていれば何でも正当化されるわけではない

テーマ:PTA問題の実際的解決をめざして
前エントリに対していただいた「正直」さんからのコメント(19)へのレスを考えていましたら長くなりましたので、エントリを立ててお答えさせていただくことにしました。


「寄附者というのは個人に限られるのでしょうか。」とのことですが、「団体」も寄付者になれます。「団体」からの寄付を否定するつもりはありません。国立大学の附属学校で行われているであろう「(会費とは別に、寄付金を任意の額で会員から集める)後援会からの寄付」は、先のエントリ(2012-07-30)でも触れたように“あり”だと思っています。


>社団法人に準じればPTAという団体も一寄附者といえ、その意思決定は各団体で規約に定めてある決定機関・方法に拠りなされた場合、PTAという寄付者の自発的意思と解釈できるのではないかと思えるのです。

問題は、その「構成員」の自発的意思が抑圧・侵害されてしまっていないかです。
団体としての「PTAの自発的意思」が担保されても、「保護者個々人の自発的意思」がないがしろにされていたら、問題ではないですか?

その観点から考えると、「PTAからの寄付」は、以下の点で、問題を含むと思っています。

①ほとんどのPTAで入退会の自由が十分に担保されていない

②(「規約上「会費の何%までで総会決議によった一律の額を総会決議によった費目において寄付を行う場合もある」などのような条文を明記し、入会時に説明して、同意を得た者だけを入会させる」((c)ぶきゃこさん)ようなケースは別として)学校に対して、あるものを寄付するか否か、いくらくらい寄付するのかについては、保護者個々人により考え方や事情が異なることが当然予想されるから、「多数決による決定」は寄付の基本的な性格から考えて問題がある


②の論点に関しては、ぜひ、拙エントリ<「事実上の強制」を認めた画期的な判決 その1(自治会裁判とPTA(3))>をご参照ください。
また、最近の拙エントリ<『学校納入金等取扱マニュアル』を読む(下) ― ないがしろにされる保護者一人ひとりの意思>も合わせてご参照いただければと思います。

②の論点について補足しますと、甲賀市の自治会判決では、自治会費から寄付金が支払われることについて、「会員の思想、信条の自由を侵害するものであって、公序・良俗に反するとされました。

ここで注目しておきたいのは、自治会の会費から寄付を行うことに関しては、事前の話し合いと総会での議決も行われていたのに、それでも「思想信条の自由の侵害」が認定された点です。
自治会側は、「民主的な議決」を経ているから会費からの寄付金の支出は正当だと主張しましたが、その主張は認められなかったのです。


この甲賀市自治会をめぐる判決と、「寄付条例」に関連しての、寄付の採納に際して自治体側が留意しなければならない事項、すなわち、

第3条 寄附の採納をしようとするときは、次の各号に掲げる事項に留意しなければならない。
(1) 公序良俗に反しないこと。
(佐渡市寄附採納事務取扱規程)


といった規程に照らし合わせると、公立学校が、PTAから寄付を受け取る場合は、よっぽど慎重にならなくてはいけないと思うのです。
(「あり方」さんご教示ありがとうございます!)


このように考えてきますと、今回、文科省から出された「通知」の中の、「一方、学校関係団体から学校に対して自発的な寄附(金銭・物件)を行うことは禁止されておらず」の部分は、それ自体誤りではないですが、非常にミスリーディングではないかと思うわけです。



「正直」さんへ
・御地における寄付採納のあり方をご教示くださり、ありがとうございます。
・何かの文書を引用されているようですが、その場合は、引用箇所と出典の明示をお願いします。





1 ■ありがとうございました。
わざわざ記事をエントリしていただき恐縮してしまいました。
まず、引用部分についてですが、以前自分が民法の基礎講座を受けた時のノートからなので元の引用先は分かりませんが、民法関係の資料には概ね同じような事が書かれていました、いい加減で申し訳ございません。
お示しいただいた甲賀市の自治会裁判の判決を見ましたが、募金・寄付金を会費に上乗せして一括徴収するも一般会計とは別管理していること、認可の地縁団体であるが未加入者に対して生活上不利益が及ぶ可能性を示唆していること、総会が代議員制であることなどが事実関係としてあった上での、“増額分の決議は無効”という判決と解釈しました。事実関係・背景によっては、この判決と違う結果の可能性もあるのでは?とも感じました。
実は私が町会長の時、町内会費の一般会計予算(会費の増額はなし)から各種募金が出せないかと会員の方から提案されたことがあります。理由は会員の高齢化などほぼ同じです。かなり議論をして結論がでず、継続審議になり、全世帯にアンケートも実施して最終的には今までどおり組長さんが廻る形で治まりましたが、総会での様子から、もし当時多数決をしていれば提案を認める結果になったのでは?と思います。
 PTAの寄附に関しては一般会計から恒常的に寄附するという発想は全く持ち合わせていませんでした。前エントリ記事のコメントで紹介されていた君津市議会(議員ブログ)での答弁に「…バザーや資源回収の収益などから…」とありますように、一般会計(収入が会費)ではなく、収益金等が原資で使途が明確になっている特別会計からが多いのではないかと想像します。毎年恒常的というのはその真偽も含め疑問符がつきますが・・・。
本記事のタイトル『「会としての議決」を経ていれば何でも正当化されるわけではない』は確かにそうだと思いますが、今回の文科省の通知を「非常にミスリーディングではないかと」までは思えません。今回通知の相手が寄附を受ける公的な教育機関ですから、もう少し詳細に注意事項を記載しても良いかとは思いましたが、法令や通達・通知などは最低限必要な要素をおさえておくことに留めておき、寄附する側の意向と受ける側の意向を反映するため十分に協議する、双方の道徳観や倫理観が最も重要ではないかと感じております。


2 ■Re:ありがとうございました。
>正直さん
横からですが意見申し上げます。

>法令や通達・通知などは最低限必要な要素をおさえておくことに留めておき、寄附する側の意向と受ける側の意向を反映するため十分に協議する、双方の道徳観や倫理観が最も重要ではないかと感じております。

この部分は、基本的な考え方として賛同できるものです。法令・通達を事細かに正確にすればするほど良い世の中になるとも思えません。
しかし、ことPTAに関して言えば、道徳・倫理はすでに踏み破られています。強制加入の実態が「違法であるかどうか」は議論の余地があるのかもしれませんが、強制加入が(少なくともそうされたくない者にとって)インモラルであることは明らかです。
インモラルをはばからない団体を「寄付の意向を持つ集団」として、自治体側とも対等に協議可能な、一定の倫理観を維持している団体として取り扱い、誤解や曲解可能な余地を持たせた通知をすることはあってはならないことと思います。
この部分(PTAという団体の「非」任意性)は当初の投稿で正直さんが疑問を挟まれた「ほかの法人」とは異なる点です。(全部のPTAがそうではありませんが)
そもそも運営主体(いわゆる執行部)が、生活の片手間運営かつ、毎年まともな引き継ぎもなくくるくる交代するわけですから。そういうのを相手に「よく話し合えば大丈夫」など無責任に過ぎます。文科省としてしっかり、そういうのを相手にやっていいこと、ならないことをリードすべき話だと思います。
人として共有すべきモラルが一方的に打ち破られた時、法令が無闇に細分化する社会に進行していくのだと思います。それ自体は嘆かわしいことかもしれませんが、仕方がありません。「歩きタバコ禁止条例」だって、くだらない法律ですが現状必要でしょう。

まっ、こんなこと書くと「保護者が学校のお手伝いをするのはモラルだろう!」と言い出す方がいらっしゃるので、またぞろ法律の話に戻らざるを得ないのですけどね…


3 ■Re:ありがとうございました。
>正直さん

どうしても、会加入の際の強制部分の問題は「問題ナシ」で議決に関する部分だけで話しを進めると言う所に堂々巡りが生じるように思うのですが。
私も頭が良いほうではないので、この部分をスルーするところに引っかかり、理解不能になるのですが。

民法ではなく、刑法で言うところ、任意団体を秘匿にし、役の強要があれば「強要罪」にあたる部分もありますよね。
ちょっとした交通事故で警察に話を聞くことがあったので、ついでで聞いたのですが、世間の周知があって「任意団体」の事実があるのだから、この強要罪の立件は無理との事ですが。
大津のイジメでも、2回も被害届受理拒否をし、公になって始めて立件、捜査、となってますからPTAも何か事がおきて、メディアが騒がない限り、何も動かないでしょうね。
検察庁が腐敗してますからね。
大阪県警なんて酷いものですが、警察も充てになりません。
経験者さんの言う通り、任意の周知が逆風に感じます。

ふぎゃこさんのオンブズマンはいいと思ったのですが(ブログは応援してます)、オンブズマンの権限ってそんなに強くもないんですよね。

まぁ、日Pは震災の子供達云々で涙流す前に、PTAに泣かされてる親子を救ったらいかが?と思ったりします。
「戦争ほど悲惨なものはない」と言い涙流しつつ、家族断裂に陥れて、善良な人達を泣かせてるってカルト教団の背景とリンクしちゃいましたが。

ちなみに、ウチの町会の場合、町会の寄付部分に関する部分で言えば、疑問を会長に投げたら町会から一括寄付の形にして集金制度を廃止しました。(退会したから今は知りませんが)
もちろん、説明も議決も、そんなものはなく、会長他、三役の一任でした。