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2012-07-06 13:32:41

和歌山PTA会費流用問題をめぐり朝日新聞より取材を受けた時にお話ししたこと

テーマ:PTA問題の実際的解決をめざして
まず、和歌山で問題になっているPTA会費の流用問題についてどう考えるか尋ねられました。そこで、以下の三点をお話ししました。

①(実態としての寄付の強要になっているのでは)
朝日新聞(3.22)「PTA会費が賃金に 和歌山県監査委員が改善求める」に、

楠本隆・代表監査委員は、「PTA会費は事実上、ほぼ強制的に徴収されている。県が支出すべき公費に使うことは、地方財政法にふれる可能性がある」と指摘した。

とある。
長年PTAのあり方に疑問を持ってきた者として、我が意を得たりの指摘だ。
この代表監査委員の指摘に対して、県教委は、

一方、県教委総務課は「PTAへの加入は任意であり、会費の使い方は学校に一任されている」との見解を示した。

とあるが、PTAへの加入の実態がどうなっているのかちゃんと把握した上で言っているのだろうか?
加入が強制だと思っていたと言う和歌山の保護者の証言もある。

会費は年に約2万円払ってきた。保護者への手引書には「会費等を納入していただくことになります」と明記されており、男性は「支払って当然。払わないと入学できないと思っていた」とこぼす。(読売新聞(4.6)「検証 PTA 会費流用 <上>年1500万円 なぜ」)

都立高校でも全く同じようなケースがあった。
県教委には実態の解明をお願いしたい。(そして、実態として加入の任意性がちゃんと担保されるよう持って行ってほしい。)


②(必要な予算は確保する努力をするべきでは)
読売新聞(4.9)「なぜ起きるPTA会費流用、甘い使途チェック」によると、県教委幹部は

「学校側から、予算が足りないという具体的な声はほとんどない」

と述べている。とても興味深い発言だ。
この発言が本当なら、学校は、親心につけ込んで、とりやすいところからお金を集めていると言われても仕方がないのではないか。安易なお金集めはおかしいと思う。
学校は、PTA会費を当てにして、必要な予算の要求を怠ってきた面があるのではないか。
これからはきちんと教委との間で予算折衝を行うべきではないか。
いったい学校以外にこんなことをやっている機関はあるだろうか?
病院でも、老人ホームでも、学校以外に「利用者の会」なるものを作ってそこに利用者(あるいはその家族)を有無を言わせず加入させ会費を集め、そこからお金をひっぱるようなことをしているところがあるだろうか。


③(会費の流用は「ただ乗り論」につながり、ひいては役職の強要を生む)
PTA会費が学校や先生のために使われると、「PTAに入らず会費を払わない人はずるい親だ」という、いわゆる「ただ乗り論」が生まれる。
「ただ乗り論」は、PTAの強制加入や役職の強要とも深くかかかわり、この観点からも(いやこの観点からこそ)、PTA会費の不適切な支出は問題だと自分は考えている。


以上のようなことをお話ししたところ、現場の声を反映したさらに突っ込んだ質問を受けました。


記者:現場の声として、財政事情の厳しい折、予算が足りなくなることもあると。例えば、部活の遠征費の補助など、基本的には個人負担に属するものかもしれないが家計の苦しい生徒もいる。そのような生徒にもチャンスを与えるためにPTA会費は必要だとする声もあるが、どう思うか。

④(「先生心」は分かるが、正規の手続きを取るべきだ)
そのような言わば「先生心」は理解できる面もあるが、だからと言って、PTA会費に頼るのは認めがたい。生徒のため、学校のためと言うのなら、やはり、第一には、先にも述べたように、予算の確保に努めるべきだ。そして、どうしても予算が工面できず、でも、学校としては何とかしたいと言うのなら、地域や保護者に対して寄付を募ってもいいのではないか。
このような学校の運営主体として当然踏むべきプロセスを飛ばして、「PTA会費」からお金を引っ張るのはおかしいと思う。

以上です。


なお、記事では、当初③の部分を中心に紹介される予定でしたが、最終的には主に②,④の部分が紹介されました。
掲載されたコメント中の「学校が寄付を募ることもあっていい」の部分に対して、拙ブログ読者の方から疑問が寄せられました。
それへの拙見解は、次のエントリで述べたいと思います。
(予定していた横浜市教委学事支援課との意見交換のご報告は、その次に行いたいと思います。)





1 ■やはり
まるおさん、お忙しい中、丁寧なエントリを立てていただき感謝します。

やはり、沢山のお話を記者に対してなさっていたのですね。主語が不明確で、文意が逆にとれる表現になってしまったのは、まるおさんの責任ではないと思っておりました。

ただ、新聞は、文字数制限が厳しく1文字単位で文章を削り上げる、ということをどなたかのツイートで知りました。ゆるくブログをつづっているようなわたしなんぞには思いもつかないご苦労だと思います。

>「学校が寄付を募ることもあっていい」の部分

こちらに対しての御エントリ、楽しみにしております!
私自身、大雑把な考えは持っているのですが整理しきれておりませんので。
教育費はできるだけ公費負担であってほしい、という理想はありつつも、理想だけでは学校は運営していけません。
では足りない部分をどうするか。
わたしは教育には、受益者負担の原則はそぐわないと思っています。なぜなら、経済的弱者・社会的弱者にこそ、巻き返しのために教育(部活含む)が必要であり、所得再分配をするべきだと考えるからです。
では、具体的な解決法は…?
ここからはまだ、知恵がでません。