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2014-08-11 01:06:22
テーマ:エビデンスとしての日本語
「世間論と日本語 ―世間論に符合する日本語の文法的特徴―」が日本世間学会の学会誌『世間の学』VOL.3に掲載されました。

書影と論文集全体の目次(収録論文のタイトル)は、こちらです。

ちなみに、PTAについての拙論文(「日本型PTAに認められる問題点-ないがしろにされる『主体性』」)が掲載されている『世間の学』VOL.2については、こちら

以前、拙ブログ記事で『世間の学』VOL.2に掲載されたPTA論文の紹介をしましたが、まとめとして、
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PTA問題とは、けっして例外的かつ表層的な底の浅い問題ではなく、我々の「存在のあり方」と深く関わる問題だと思うのです。
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と述べました。
http://ameblo.jp/maruo-jp/entry-11194438034.html

今回の論文では、その我々の「存在のあり方」について、日本語の文法的特徴から迫ったつもりです。


目次は以下の通りです。

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はじめに

1.「長幼の序」…敬語・人称詞のあり方
1.1 敬語体系の存在と中立的文体の欠如
1.2 「敬語行動」をめぐる日米比較 - 浮かび上がる「長幼の序」
1.3 「敬語行動」をめぐる日韓比較 - 浮かび上がる「相手」と「集団」の重さ

2.「贈与・互酬の関係」…授受に関わる表現

3.「共通の時間意識」…「よろしくお願いします」他・終助詞
3.1 「共通の時間意識」とは
3.2 「絆」の存在を示すその他の表現
3.3 終助詞「ね」の必須性

4.「自己決定の不在」…「自発表現」
4.1 「自発表現」- 「場所」としての「私」
4.2 「~ことになる」- 「主体性」を秘す「私」
4.3 尊敬語と謙譲語の成り立ち - 「自然発生」を尊び、「行為」を卑しむ心根

5.「空気の支配・所与性」…「S」が析出されない構文的傾向
5.1 「空気の支配」と「世間の所与性」とは
5.2 日本語における自動詞構文への好み - 非分析的傾向

6.「差別性・排他性」…自己中心性と二人称志向性
6.1 「自己中心性」と「差別性・排他性」- 差別性の背景
6.2 「二人称」への過剰な配慮と「三人称」への冷淡な扱い

まとめに代えて - 日本語の整理を通して見えてくるもの
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日本語論の観点から世間論の主張を裏付けていくという論の進め方になっていますが、私的には、世間論に導かれつつ、長年日本語について抱いてきた“もやもや”をかなりの程度整理できました。
整理や考察が足りないところも多々あることは自覚していますが、自らの問題意識をとにもかくにも“一か所にまとめられた”ように思います。今後は、ここを起点に前に進んでいければと思っています。

なお、この論文は、2012年の11月に開催された日本世間学会 第28回研究大会で、「世間学における指摘と日本語のありかた ~主体性と第三者的視点の欠如をめぐって~」と題して発表したものを、自分なりに発展させたものです。
発表時に配布したハンドアウトは、以下の拙エントリに貼ってあります。
・日本世間学会 第28回研究大会で発表して(1) 発表篇

そのエントリにいただいたコメント(「世間論の論点をもっと分かりやすく示すべきでは」)等も参考にさせていただき、日本語の考察もより進めたつもりです。

次のエントリでは、「世間」のあり方とPTA問題との関連性について述べてみたいと思います。